そこでステーブルコインの特徴やメリット、将来性などについてご紹介していきます。
ステーブルコインとは?仮想通貨の現状と課題
これまでの仮想通貨には技術的な課題の他に、価格の不安定さという問題がありました。そのような課題を克服すると期待されているのが、昨今話題となっているステーブルコインです。
仮想通貨の現状や課題についての詳細と、ステーブルコインの概要についてお伝えします。
これまで主要な仮想通貨のほとんどが、2017年度末から2018年の年初にかけて大きく上昇し、最高値を付けました。しかしその後の相場は大きく低迷が続き、大幅上昇前の水準に戻りつつあるといった状況になっています(2019年1月時点)。
技術的な課題
この間にいくつかの仮想通貨がハッキングに遭ったりと、さまざまな事件が発生してきました。
主要な仮想通貨はブロックチェーン技術によって開発されているものが大半ですが、このようにハッキングされるリスクを完全に払拭できていないなど、様々な技術的な課題もあるの現状です。
ボラティリティに関する課題
また、相場のボラティリティゆえに、価格の不安定さによる実用上の課題もはっきりとしています。これは仮想通貨は未だに通貨自体の価値が不安定であるがゆえ、価格の変動が激しく、本格的な実用性からは遠いのが現状となっているのです。
仮想通貨がもたらす価格の不安定さは、通貨の実用面に様々な問題をもたらすことになります。例えば、昨日取り引き相手から送金してもらった通貨が、今日の時点でその価格が半分になってしまうという事態が考えられます。
また、昨日買おうと思っていた商品が今日は3倍になっていたら、いつ買っていいのかがわからなくなるでしょう。
決済手段としての利用への期待
仮想通貨は決済手段としての利用が期待される側面も大きく、このようなボラティリティの大きさに起因する価値の激しい変化は、今後の普及に足かせとなります。
今日においてはまだ決済手段としては主流となるには遠いために、それほど実用面での問題にはなっていません。しかし、今後の普及を見すえ、解決しなければならない課題であることは明らかです。
ステーブルコイン誕生の経緯
このように仮想通貨にはボラティリティの大きさと、それに起因する価格変動の大きさといった課題があります。しかし、ここへきてそのような状況に一石を投じるものとして期待されているのが、今回ご紹介するステーブルコインです。
ステーブルコインとは
ステーブルコインとは、一般的には「価格変動(ボラティリティ)の無い通貨」を指し、価格が一定である通貨のことをさします。
ステーブルコインの名前ですが、ステーブルには「安定した」という意味があります。
ペッグ通貨と呼ばれることもある
また、ステーブルコインは別名で「ペッグ通貨」とも呼ばれています。ペッグには本来「釘で固定する」という意味があります。
このような元の意味から、さらにペッグは「基軸通貨などに価格を連動させてレートを一定に保つ仕組みや制度」を意味しています。
そのために、基軸通貨と「同一である」という、いわゆる等価価値を担保する必要があります。後述する無担保型のステーブルコインを除けば、何かしらの基軸通貨を担保とするステーブルコインは、発行元となる銀行などに担保となる法定通貨を預けてトークンを発行する仕組みをとっています。
ステーブルコインはこのような担保のあるものと、全く担保の無いものなどに分類できます。それではその種類と個々の特徴について、次にご紹介していきます。
ステーブルコインの種類とそれぞれの特徴
ステーブルコインがその価値を担保する方法に応じて、以下の「法定通貨担保型」、「仮想通貨担保型」、「無担保型」の3種類に分けることができます。
法定通貨担保型
法定通貨とは日本円や米ドルなど中央銀行が発行し、国や政府がその価値を保証している通貨のことです。法定通貨担保型のステーブルコインは担保の対象となる法定通貨(これを基軸通貨と呼びます)の値動きに連動する通貨となり、基軸通貨とはいつでも交換ができます。
ステーブルコインで担保となる法定通貨の種類には、米ドル、日本円などの先進国の通貨や資源国や新興国の通貨の他にも、金や原油など一般的にコモディティと呼ばれる種類にも分類することができます。
いずれの種類にせよ、為替取引と同じように基軸通貨の国や政府の経済や政治情勢、金融市場の動向などによって価格が変動します。従って、基軸通貨の国や政府、中央銀行といったその価値を保証する中央集権機関の信頼性が重要になってきます。
仮想通貨担保型
法定通貨担保型が法定通貨を担保としているのに対し、仮想通貨担保型は文字通り仮想通貨を基軸通貨として担保されるステーブルコインになります。
従って、法定通貨担保型と同様に基軸となる仮想通貨の値動きに連動していますし、その仮想通貨とはいつでも交換することができます。しかし、基軸となる仮想通貨の価格自体が不安定である点が否めません。
現在発行されている仮想通貨担保型のステーブルコインの中には、イーサリアム(ETH)など取扱高が大きくて比較的信頼度も高く、広く認知されている仮想通貨をその担保としているものもあります。
無担保型
法定通貨や仮想通貨など既存の通貨を担保とせず、通貨供給量を調整することで価値を担保するのが、この無担保型です。日本銀行などは貿易動向や経済情勢など通貨に対する市場の需給バランスに応じて、市場に出回るお金の供給量を調整しています。
無担保型のステーブルコインも同様の動きをすることで供給量を調整します。市場に出回るステーブルコインの量が需要に対して多すぎる場合は、供給を制限します。
反対に需要が高くなってステーブルコインの必要量が不足する場合には、新たに発行して調整を図ります。第三者のコントロールに影響されないという意味では既存の仮想通貨の仕組みに近く、大きく普及する可能性もあるとされているのが無担保型です。
ステーブルコインのメリット
ステーブルコインはこのように大きく3種類に分けることができますが、以下に挙げるようなメリットがあります。
価格の安定性に貢献
仮想通貨の大きな課題の一つになっているのが、価格の不安定さです。ステーブルコインなら市場から一定の信任を得ている法定通貨などを担保とすることで、ある程度の価格の安定性がもたらされます。
価値が安定していることでユーザーは安心して預金をしたり、送金や決済手段として利用することができます。
資産防衛としての役割
上記の価格の安定さは別の意味でもメリットがあります。それは資産価値を守ることにつながるからです。
例えば、政治や経済不安定に伴うインフレ、民族対立、紛争など地政学リスクの高い国の法定通貨は不安定です。ちょっとしたネガティブなニュースが流れるだけでも市場から売り浴びせられ、暴落する可能性さえあります。
そして一度暴落が起きれば、それまで以上に通貨価値が下落し、ハイパーインフレなどのリスクも発生します。このような状況下にある国の場合、ステーブルコインは資産の避難先としての役割も担ってくれます。
同じことは仮想通貨にも当てはまります。仮想通貨市場において価格暴落などが発生すると予想される場合や、実際に暴落が起きた場合の資産の避難先として利用可能なのがステーブルコインなのです。
国境を超えた法定通貨としての代替機能
法定通貨は、国によって当然異なる通貨が利用されているために、他国の通貨を利用する際には両替が必要になってきます。しかし、ステーブルコインなら仮想通貨と同じように両替の必要性が無く、ボーダーレスで決済手段として利用可能になります。
また、現在の海外送金ではSWIFT決済が一般的ですが、非常に時間がかかります。最短でも着金までに数日かかることが普通です。
しかし、ステーブルコインのユーザー同士ならはるかに短時間かつ低コストで簡単に送金できますし、世界のどこからでも利用可能です。また、他の仮想通貨と違って価格が安定しているために、価値の毀損リスクを緩和することができます。
ステーブルコインの普及状況
ステーブルコインは既に世界中で普及しており、その数は80を優に超えています。
2019年1月時点では日本国内ではステーブルコインを販売している取引所はまだありませんが、海外では今後もますますその数を増やしていく勢いにあります。
既に発行済みのステーブルコインを大きく分けると、先ほどご紹介した「法定通貨担保型」「仮想通貨担保型」「無担保型」のいずれかとなっています。
担保ごとに代表的なステーブルコインをご紹介していきましょう。
米ドル担保型のステーブルコインの例
法定通貨としては世界中で最も広く取り引きのある米ドルに連動するのが、米ドル担保型です。この米ドル担保型として最もメジャーなコインはTether(テザー/USDT)です。
OMNI(オムニ)というブロックチェーンを基盤とするテザー(USDT)は、これまで米ドル担保型ステーブルコインでは断トツの人気でしたが、2018年10月15日に価格が大暴落すると1USD=1USDTでペッグされていたのが、0.945付近まで下落しペッグが外れました。
これは担保とする通貨が実際には預けられていなかったのではないかといった疑念や、他の様々な懸念を要因として起こった暴落でした。テザーは通貨としての安定性に関する懸念が未だに市場に残っており、信頼性を完全に回復しきれていない通貨と言われています。
米ドル担保型のステーブルコインには、他にGemini Dollar(ジェミニ・ダラー/GUSD)などがあります。ジェミニ・ダラーの最大の特徴は、担保である米ドルがアメリカ国内の大手銀行に預けられ、それが破綻時などのFDIC(連邦預金保険公社)による預金保険の保護対象になっている点が挙げられます。
この預けられている米ドルについては、毎月その残高に対して監査法人による監査チェックも入っています。さらにニューヨーク州金融サービス局(NTDFS)から公的に認可されているコインであることも特筆すべき点といえます。
担保の存在について疑念を抱かれたテザーなど他のステーブルコインよりも、安全性と信頼性が高いと考えられているコインといえるでしょう。
その他にも米ドル担保型のステーブルコインとしては、イーサリアムのERC20に準拠したTrue USD(トゥルー・ユー・エス・ディー/TUSD)やブロックチェーンベースのPaxos Standard(パクソス・スタンダード/PAX)などがあります。
日本円担保型のステーブルコインの例
日本円は金融市場でも最も安全な通貨の一つと考えられており、ステーブルコインの担保にもなっています。日本円を担保とするステーブルコインはLCNEM(エルシーネム)があります。
仮想通貨のネム(NEM)のモザイクという、独自のトークン発行機能を利用して発行されるコインです。プリペイドカードのように前払いでポイント購入して利用するコインとなっています。
この他にもいくつかの日本円担保型ステーブルコインの発行が予定されています。
他の通貨担保型ステーブルコインの例
米ドルや日本円の他にも、ユーロを担保としたStasis EURS(ステーシス・ユーロ)や人民元を担保にしたBit CNY(ビット・シーエヌワイ)などがあります。
金や原油を担保としたものもあり、金を担保とするコインにはDigix DAO(ディジックス・ダオ)などがあります。また現在は購入できませんが、原油を担保としたベネズエラのPetro(ペトロ)も発行されていました。
仮想通貨担保型と無担保型のステーブルコインの例
仮想通貨担保型としてはイーサリアム(ETH)を担保としているMakerDAO(メイカー・ダオ/DAI)の例があります。また、無担保型にはBasis(ベーシス)などがありましたが、2018年末にプロジェクトの撤退が発表されました。
ステーブルコインの将来性
ステーブルコインですが、まだペッグの対象となっていない法定通貨も多く、今後も様々な法定通貨を担保とするコインの誕生が想定されます。
また、仮想通貨にペッグするものや無担保型、さらに既に一部で発行されていますが、仮想通貨と無担保型がハイブリットされたものや法定通貨と無担保型のハイブリットタイプの登場も予想されます。
担保とする通貨やプロジェクトごとに市場から期待される信頼性などが異なり、大小様々なステーブルコインが市場で共存していく可能性があるでしょう。
STO(セキュリティ・トークン・オファリング)とは
さらに最近ではこれまでの仮想通貨のICO(イニシャル・コイン・オファリング)に取って代わると期待されている、STO(セキュリティ・トークン・オファリング)がさかんになりつつあります。
STOは、簡単にお伝えするとSEC(アメリカ証券取り引き委員会)のルールに準拠したトークンによる、市場からの資金調達です。詐欺的な行為も散見された仮想通貨の新規上場であるICOに比べ、スキーム上の自由度は劣るものの、法的な信頼性が高いのが特徴です。
仮想通貨のICOの対象がどちらかといえば個人投資家中心だったのに対し、STOは企業などの機関投資家からの幅広い投資マネーを呼び込めると期待されています。
STOとステーブルコイン
STOがさかんになればますますステーブルコインの市場価値が高まり、新規のステーブルコインを発行しようという流れが強まる可能性も考えられます。
また、そのような段階においては仮想通貨の取り引き通貨ペアが、ビットコイン(BTC)などの主要通貨からステーブルコインに取って代わられることもあるのかもしれません。ステーブルコインが市場からどのような信任が得られるのかが、今後の鍵となりそうです。
ステーブルコインの今後に注目
この記事ではステーブルコインの仕組みやメリット、将来性についてお伝えしました。ステーブルコインがメジャーな通貨として広く取り引きされるかは、現時点で定かではありません。
仮想通貨の今後の動向や各国当局からの法的規制やルール変更などにも影響されるため、現時点では将来がどうなるのかについては断定できないといえるでしょう。
しかし、ステーブルコインには法定通貨や仮想通貨に無いメリットや仕組みなどもあるため、今後の動向には絶えず注意を払っておきたいところです。
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